死の病原体プリオン
とにかくおもしろい。息もつかせぬ興奮と戦慄(せんりつ)の連続だ。ニューギニアの人食い族の間で呪術のせいとされた奇病に端を発する第1部から、「現代の生物学では解けない謎」を探る第2部、イギリスで発生した狂牛病を扱う第3部まで一気に読まされた。 本書のおもしろさの一面は、「免疫反応を引き起こさない感染症」の謎解きにある。ニューギニアのクールー、約200年前に発見された羊のスクレイピー、クロイツフェルト=ヤコブ病、狂牛病など、それまで何の関連もなかった病気が実は同じ病原体によることが徐々に明かされてゆく。 その病原体といわれるのがプリオンだ。プリオンは遺伝子を含まずに増殖する「感染性タンパク微粒子」なので、「遺伝情報の伝達はDNAからタンパク質へ一方通行に行われる」というセントラルドグマに反する。もしも、その性質が本当だとすると、生物学を根底から覆してしまうほどの物質である。しかしまだ仮説の域を出ないともいわれ、その真偽をめぐる考察も読みごたえがある。 何よりも、この病原体の恐ろしさに読者は衝撃を受けるだろう。放射線照射や360度の高温でも感染力を失わず、致死率は100%。患者の脳はスポンジ化し、苦しみと絶望の果てに死に至る。狂牛病の牛を食べるほかにも、さまざまな感染経路が考えられると本書は警告する。今のところ人間の感染例はヨーロッパにとどまっているようだが、しっかりした対策を取らなければどの国でも感染の危険はある。つまり、誰一人として他人ごとでは済まされないのである。(齋藤聡海)
私の様な科学オンチにはストーリー仕立ての本書は解り易く
全体的には初心者にも読みやすくなっていると思う。個人的には人食い族の話や、アイス・ナインなど興味深いところはどんどん読み進められた。
〜最近牛肉を輸入再開するかしないかしか話題になってないけど、この本によれば、BSE発病してない牛でもプリオン持ってる牛を食べたら危ないし、それだけでなく、牛肉食べなくたって、プリオンを含んだ骨粉とかの飛散によってプリオンを摂取してしまう恐れがあって、生きてるだけで危ないじゃん!ってことになる。そこら辺最新情報をチェックしたいとこです。
この本は,プリオンの科学的な真実が分かるという訳ではありません.しかしながら,多くの取材からプリオンを巡って様々な科学者がいかに戦ってきたか,そしてそれを取り巻く政治的・行政的な背景などを非常に興味深く読ませます.スポンジ状脳症の研究でノーベル賞を受賞したGAJDUSEKのインタビューや人となりが分かるこの本は,ジャーナリストの仕事として面白いものだと思います.ですがたまに出てくるへんなもの(SF作家のコメントなど)は,ちょっといただけないです.ちなみにこの本の出版時に,福岡伸一氏は解説中でスポンジ状脳症プリオン原因説に疑義を挟んでいらっしゃっていますが,この本の出版された1998年以降,スポンジ状脳症の原因物質としてのプリオンの存在はますます認知される方向に加速?!??!??に進んでいると言っても良いと思われます. この本には興味深い様々なデータが示されるのですが参考文献が無いためにその確認が出来ないのが残念です.もう少し,プリオンのデータに基づいた話題や参考文献も知りたいという方は,1997年のノーベル賞受賞時のPrusinerのScience誌の論文でも参考文献として触れられた日本のプリオン研究の第一人者である立石 潤氏による『プリオンとプリオン病』や小野寺 節氏らによる『脳とプリオン―狂牛病の分子生物学』がお奨めです.
国内の狂牛病問題が深刻化し、一般の方々でもBSE関連本に興味を持たれる まるで良くできたSF小説を読んでいるかのような読者を引き込む魅力を持ちつつ、その手の作品でありがちな誇大解釈はやや抑えられている感がある。 プリオンをめぐる実際に起こった関連事件を経時的に追ってゆく手法も見事だし、要所要所ではややフィクション的な演出があるが印象は悪くない。 |
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